祖母の花壇

日記

祖母は料理とお菓子とパン作りがとても上手。

人柄からはパワフルな人という印象は受けないけれど、私が幼い頃、ゲームキューブで「ゼルダの伝説 風のタクト」を家族の手を借りながらもプレイしたり、お菓子のレシピを作るのにワープロからパソコンに乗り換えて、教わりながらもWordの操作を覚えてみたりと、エピソードは活発な人だと思う。

ガーデニングも好きで、祖母の家には玄関先の小ぶりな花壇と、庭の端から端まである大きな花壇がある。
足腰を傷めてからはあまり手を付けていなかったけれど。

そんな祖母が、ここ数年の流行病で家にこもりがちになった。
近距離に住む私たち家族も、万一祖母に感染させてはと足が遠のいていた中、それでも最初は安全のために自粛していたくらいで、FireTVとスマホアプリの操作を覚えてYouTubeを楽しんでみたりと、おこもりしながらも楽しそうにしていた。

けれど人との関わりが一気に減り、料理やお菓子作りも張り合いがなくなって、気づいたら広いリビングだと空調がもったいないからと部屋に一人、ベッドに座って過ごすことが多くなっていた。

運動不足も勿論問題だけれど、めっきり気力が減ってしまって、心配性が加速。
「まずいなあ」というザワザワとした不安が私たちの中に広がる中、春と祖母の誕生日が近づいてきた。

最初は家族で相談して、花束を贈ることに。
地元のお花屋さんで素敵な花束を作ってもらっている時、店主のおじさんが「アネモネの鉢植えも一緒にどう?」と。

鉢を買う予定はなかったけれど、一輪咲く花が綺麗だったし、おじさん曰く「丈夫でめちゃくちゃ花が咲く種類だ」とのことで、「水やりにくらい外に出てもらおう!」と勢いで購入。

その足で祖母の家に行き、花束とアネモネの鉢を渡した。
アネモネの鉢は、「ここなら祖母の部屋から見えるんじゃない?」とやいのやいの言いながら庭に鉢植えのまま置くことに。

次の日から、祖母から花束とアネモネの状況を告げるLINEが届き始めた。

「蕾が一つ咲いた」
「花束が長持ちで今日も綺麗」
「今日見て見たら蕾が3つも増えている!」

など、水をやりながら楽しそうにしているのが嬉しそうだった。

そうしてどんどん暖かくなって、街にも花が増えてきたころ、祖母から「園芸店に行きたい」と。
週末すぐに連れたって園芸店に行き、パンジーやデイジーなど、今度は鉢植えではなく直植えする花をたくさん買って祖母の花壇を埋めた。

青紫のパンジーの後ろに白と黄色のパンジーが植わっている花壇。
濃く鮮やかなピンクのデイジーの鉢植え。

庭に花を植えてみると、「咲いたね」とか「きれいだね」とか、庭先での会話が増えた。

春の暖かさと花の彩のおかげで祖母は少しずつ明るくなって、今月のはじめ、久しぶりにパンを作っておすそ分けをしてくれた。

久々に食べた祖母の塩パンが美味しかった、元気な祖母を見られて嬉しかった、今年の春の話。

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